Service Design
UX/UI Design
担当範囲
サービスデザイン(HCD導入・サービスブループリント兼カスタマージャーニーマップ作成)・UXデザイン(ペルソナ作成・インタビュー設計&実施・ファシリテーション)
背景
私が所属する企業で提供しているB2B2Cサービスにおいて、サービス全体のプロセスを可視化するジャーニーマップの制作を担当しました。
本サービスは一見するとシンプルなWebサービスですが、実際には社内外を含めた多くの関係者が存在し、それぞれが異なる役割を担っています。営業、導入支援、運用担当、カスタマーサポート、利用企業の担当者、そしてサービスを利用するエンドユーザーなど、登場人物は非常に多く、「誰が・いつ・何をしているのか」という理解がプロジェクトメンバーごとに異なっている状態でした。
同じ言葉を使っていても、人によって思い浮かべるプロセスが違う。その認識のズレが議論の噛み合わなさや施策の優先順位を決める難しさにつながっているように感じていました。
そこで私が提案したのが、サービスブループリントとカスタマージャーニーマップを組み合わせた、一枚でサービス全体を俯瞰できる資料を作ることでした。単なる業務フローではなく、実際のユーザー体験や担当者の感情、システムとの接点まで含め、誰でも・いつでも理解できる共通言語を作ることを目指しました。
ポイント
本プロジェクトで最も意識したのは、「正確さ」だけではなく「伝わりやすさ」です。
業務フローを正しく描こうとすると、どうしても専門用語や複雑な図が増え、結局読める人が限られてしまいます。しかし、本資料の目的は特定の職種だけが理解できることではなく、初めてプロジェクトに参加したメンバーでも数分で全体像を把握できることでした。
そのため、登場人物はすべて平易なイラストで表現し、誰がどのタイミングで登場するのかを直感的に理解できるよう工夫しました。また、ユーザーの行動だけでなく、その裏側で社内ではどのような処理が行われているのかをサービスブループリントとして整理し、それぞれを上下で対応させる構成を採用しています。
さらに、単なる工程だけではなく、その場面でユーザーが実際に感じていることや発言した内容、どのようなメールや通知が送られているのかまで一つの資料に集約しました。プロセスだけを理解する資料ではなく、「この瞬間にユーザーは何を体験しているのか」まで想像できることを重視しています。
プロセス
ジャーニーマップを作るにあたり、プロセスに詳しいプロダクトオーナーや勤務歴の長いメンバーだけで実施することもできましたが、それではどうしても思い込みや理想の業務フローが入り込んでしまいます。そのため、実際に日々サービスに関わっている担当者へのインタビューを実施し、現場で何が起きているのかを一つひとつ確認していきました。
また、このインタビューにはプロジェクトメンバーにも参加してもらいました。完成した資料だけを見るよりも、実際の担当者が悩みや工夫を語る場に立ち会うことで、プロセスに対する理解や解像度が大きく変わると考えたためです。
インタビューを通して整理した内容をもとに、まずはサービスブループリントとして業務全体を可視化し、その上にユーザーの行動や体験、感情、システムとの接点を重ねていきました。
加えて、実際に送信されるメールや通知なども資料内に配置することで、「このタイミングでは何が起きているのか」をより具体的にイメージできるよう工夫しています。
制作中は情報量との戦いでもありました。プロセスを忠実に再現しようとすると、どうしても資料は複雑になってしまいます。一方で、情報を削りすぎると実務で使えなくなる。そのバランスを探るため、レイアウトや情報の優先順位は何度も見直しを行いました。
結果として、詳細な情報を持ちながらも、一目で全体像を把握できる資料としてまとめることができました。
まとめ
本資料は特定のプロジェクトのためだけではなく、その後も新規メンバーのオンボーディングや、施策検討時の共通認識づくりなど、さまざまな場面で活用されています。
制作から3年以上が経過した現在でも、「あのジャーニーマップを使いたい」「資料を共有してほしい」と問い合わせをいただくことがあり、プロジェクトを越えて社内資産として活用され続けています。
デザインというと画面やUIを作る仕事と思われがちですが、私が大切にしているのは人によって異なっていた認識を揃え、議論の土台をつくることです。
複雑なサービスほど、まず必要なのは新しい画面ではなく共通認識です。このジャーニーマップはそのためのコミュニケーションツールとして今も役割を果たし続けています。