Service Design

担当範囲

サービスデザイン(ビジョン策定・ブランドストラテジー)・ロゴ制作

背景

創業間もないスタートアップから「一人目のデザイナーとして参画してほしい」という相談をいただいたことが本プロジェクトの始まりでした。
参画当初はプロダクトデザインと並行しながら会社としてのブランドづくりも進める必要があり、最初のアウトプットとしてコーポレートロゴの制作を実施しました。
創業者から伝えられた会社名は「Rond」。その由来は「rough diamond(ダイヤモンドの原石)」にあります。ロゴは複数案を制作し、創業者との議論を重ねながらブラッシュアップを行い、一つのロゴとして完成させました。
一方で、当時は創業初期ということもあり、事業やサービスの方向性を模索しながら組織づくりも同時に進んでいるフェーズでした。メンバーそれぞれのコミットメントにも濃淡があり、メンバーの入れ替わりも少なくない時期だったと言えます。

そのような状況の中で創業者から「会社としてのビジョンもきちんと整理したい」という相談を受けました。
ビジョンは事業の方向性を示すだけではありません。創業初期だからこそ、「どのような想いを持った人と一緒に会社をつくっていくのか」という一つの判断軸としての役割も求められていた時期だったのではないかと考えています。
そこで改めてブランドストラテジーの整理を提案し、約3時間にわたる壁打ちを実施しました。
対話ではコーチングアプローチを取り入れながら、創業者の原体験、事業を始めた理由、実現したい未来、そして開発中のサービスについて一つひとつ整理していきました。印象的だったのは、対話を重ねる中で、それまで個別に語られていた出来事や想いが、一つの循環としてつながっていることが見えてきたことです。
創業者の原体験が行動につながり、その行動が新たな出会いを生み、そこから得た気づきが再び次の挑戦へとつながっていく。その循環構造を図式化したことで、会社として目指す方向性やサービスが果たす役割も整理され、その後のビジョンやブランドデザイン全体の判断軸となりました。

創業者との対話から整理した、ブランド全体を貫く循環構造

ポイント

本プロジェクトで意識したのは、ロゴ単体を制作することではなく、会社として一貫したストーリーを構築することでした。ブランドは、ロゴだけで成立するものではありません。会社が目指す未来があり、その背景にある価値観や思想があり、それらが言葉となり、最後にビジュアルとして表現されることで、初めてブランドとしての一貫性が生まれます。
今回も、創業者との対話から整理されたブランドストーリーを軸に、ロゴの意味付け、ブランドメッセージ、シンボルデザインまで一つの流れとして設計しました。
また、このブランドストラテジーはロゴ制作だけで終わるものではなく、その後のサービスデザインやコミュニケーションデザインを判断する際の共通言語としても機能するよう意識しています。

プロセス

会社名の由来となった「rough diamond」を起点に、まずはダイヤモンドというモチーフそのものをリサーチしました。その中で着目したのが、ダイヤモンドの「へき開」という性質です。ダイヤモンドには衝撃を加えると割れやすい方向が存在し、その性質から原石は八面体になりやすいと言われています。
この特徴をロゴタイプの「o」に反映し、完全な円ではなくわずかに八面体を想起させる形状として設計しました。また、この「o」は単なる文字ではなく、会社全体を象徴するシンボルとしても活用できるようデザインしています。
さらにブランドストーリーをより強固なものにするため、ダイヤモンドの品質評価として知られる「4C」という考え方を、会社独自の価値観として再定義しました。
・Cheer
・Collaboration
・Character
・Career
会社として大切にしたい4つの価値を定義し、それらをロゴだけではなく、ブランド全体のメッセージとしても展開しています。
ロゴデザインについては一案のみを制作したわけではありません。
複数の方向性を提案し、それぞれが持つ良さやブランドとの親和性について創業者と議論を重ねながら、一案をベースに他案のエッセンスも取り入れてブラッシュアップを行いました。
「どのデザインが最も美しいか」ではなく、「どのデザインが会社としての思想を最も体現できているか」という観点で意思決定を進めています。

複数案を比較しながら、ブランドストーリーとの整合性を軸にブラッシュアップを実施
会社独自に再定義した「4C」
名刺のシンボルマーク。空押し加工を用いて「何もなかったところから削り出される可能性」を表現している

まとめ

ロゴ制作をきっかけにブランドストラテジーまで整理したことで、その後のサービスデザインやコミュニケーションデザインにおいても、「会社としてどうあるべきか」という共通の判断軸を持つことができました。私自身もその後、一人目のデザイナーとしてプロダクトデザイン、コミュニケーションデザイン、マーケティングデザインなど、事業全体に継続して関わることとなりました。
ブランドストラテジーは、一度作って終わるものではありません。事業や組織が変化すれば、ビジョンやメッセージの表現も変わっていきます。一方で、創業者がどのような原体験を持ち、何を実現したいのかという根底の想いは変わりません。

今回のプロジェクトでも印象的だったのは、対話を通じて創業者の頭の中にあった点と点が一本の線としてつながり、それが会社全体を貫く循環構造として整理された瞬間でした。
ロゴは、その循環を象徴する一つのアウトプットに過ぎません。
ブランドデザインとは見た目を整えることではなく、人や組織の想いを整理し、それをサービスやコミュニケーション、プロダクトへと一貫して落とし込んでいくプロセスそのものだと、このプロジェクトを通じて改めて実感しました。